ふじょしの棚卸し

15年以上のキャリアを持つ腐女子が、BL鉄板シチュに対する考察をしたり、アニメの感想を書いたりします。

飲酒ネタの形式美

自分の適量をわきまえず、酒の席でなにがしかの失敗をやらかすというのは、多くの新成人が通る通過儀礼のようなものだ。
ウザイ絡み酒をしてしまったり、記憶をなくしたりと、かく言う私も翌朝正気になって蒼褪めた経験は両手では足りない。

しかし転んでもタダでは起き上がらないのが腐女子である。

 

口が軽くなる。前後不覚になる。記憶をなくす。
こんな一夜の過ちを犯し放題のおいしいシチュを、自カプに当てはめずに捨て置けるはずがない。


実際、飲酒ネタは、成人カプなら避けては通れない鉄板シチュである。
やらかして翌日頭を抱えるまでが形式美だ。

しかしアニメのキャラクターたちは未成年である場合が多く、その際は苦肉の策としてウィスキーボンボンなどのアルコールを含有したお菓子が代用される。
ソーダなどの炭酸飲料で酔ったような状態になってしまうこともままある。
(BLはファンタジーなので、「炭酸なんかで酔うかよ」というツッコミは野暮というものだ。)

そのような場合は大抵エグイBLにはならず、R-15程度の微笑ましいスキンシップ等で終わることが多い。
確かに、中高校生風情が法に抵触せずに摂取できる程度のアルコール量ではそれが限界であろう。

そこでよく二次創作で用いられるのが、年齢操作という手法だ。
年齢操作には、素直に原作の数年後という設定と、オリジナル設定そのものを改変してキャラクターの年齢を自由に変えるものの2種があるのだが、いずれも読んで字のごとくキャラクターの年齢を操作して合法的にお酒を飲めるようにしてしまうのだ。
そうなってしまえばこっちのもの、あとはヤリたい放題である。


飲酒ネタの第一に素晴らしい点は、膠着した関係を打破する起爆剤となるところである。

本当は互いに想い合ってはいるものの、相手との関係を壊すことを恐れるあまり一歩を踏み出せないということは非常によくあるケースだ。
特に、すでに親友や幼馴染としての確固たる地位を得ている場合は、相手のそばに居続けるために自分の本当の気持ちを隠して友人関係を続けることが多く、原作で絡みの多い幼馴染や親友同士は、大抵二次創作の世界では相手への思慕の念を抑えきれず激しく懊悩している。
お前ら早くくっついちまえよ的なもだもだは、それはそれでまぁ大変美味しく頂けるのだが、やはり二人には何とかして一線を越えていただきたい。

そこで満を持して登場するのが、酒である。

どちらかの自宅で飲酒して潰れるもよし、みんなで飲んでいて潰れた相手の介抱押し付けられるもよし。
とにかく酔った相手と二人きりになれば、話は動きだす。
これまでひた隠しにしてきた気持ちを吐露してしまい、想いが通じ合うカタルシスは何物にも代えがたい。
想いを確かめ合ってそのまま一線を超えてしまう場合もあれば、こんな酒の勢いで関係を持つのなんてならぬ!とシラフ君が血の涙を流しながら鉄の意志で我慢するパターンもある。

ちなみに私が愛してやまないのは、色っぽい展開になったものの「イザ!」というタイミングで泥酔した方が寝落ちして、くそっ明日覚えてろよ!とか言いながらシラフ君が一人寂しく処理するというパターンである。
ソロプレイ尊い。

そして、何はともあれ狂乱の一夜が明けるわけだが、これが飲酒ネタのもう一つの山場である。
前日の失態に身もだえして頭を抱える泥酔君に、やはりあれは酒の勢いだったんじゃないかと不安になるシラフ君。
ここに第二のカタルシスがある。
盛り上がった気持ちが、氷水をぶっかけられたようにしぼんでいき、そして今度はシラフで、互いの気持ちに向かい合うのだ。
一粒で二度美味しい、飲酒ネタはまさに鉄板シチュ界の優等生だ。


また、ここまでは片方は記憶を保っているパターンについて語ってきたが、もちろん両方が記憶をなくしているパターンもありうる。
この場合は翌朝目が覚めてやっちゃった感溢れる言い逃れできない状況に二人して頭を抱え、昨晩何があったのかを互いに探りを入れていく。
特筆すべきは、このパターンでは必ずしも二人が関係を持つ前から互いを恋愛対象としてみている必要はないということだ。
やらかしたことに対する困惑はあるものの、行為そのものに嫌悪感は抱いてない自分に気付き、戸惑いながらも俄然相手を意識するようになる。
そして次第に相手に本気になっていくが、肉体関係から始まってしまったものだからどういう風に関係を進めていけばいいのかわからず、気持ちを隠して体だけのライトな関係を誘い、互いに傷つけあいながらズルズルとセフレのような関係を続ける...
心より先に身体が繋がる系BLは心と体の裏腹さが醍醐味で、BLの一つの王道とも言える展開だが、このように飲酒が契機となることが決して少なくはない。


既に出来上がってるカプに対してももちろん飲酒は有効な萌えシチュで、ツンデレのツンが削ぎ落とされたり、いつもは淡白な受が発情モードになったり、その可能性は無限大である。

まさに酒は人生の友、BLの友である。